いたこあちあら⑩

としみん

2012年07月18日 09:43

16日、月曜日。

バスの出発時間が午前10時半で
その前にチケットを買わなきゃいけないのに
誰も起きてこない…。

日本人はいちいちこういうことが気になる。
大丈夫か?

しかしながら、9時半過ぎにみんなゴソゴソと起きだして
コーヒーをすすりながら「さあ行こうか」ってことになった。
ファビオラさんは
「わたし、夕方から仕事もするのよ!」と張り切っていたが
案の定バス乗り場で聞いてみると
全ての座席は売り切れた後だった…。

それでもまったくめげないのがブラジル人のいいところ。

「インターネットしたいからネットカフェにいきましょう!」

なんじゃそりゃー。
そういえば今朝からファビオラさんちの周り一帯は停電してたっけ。

何軒かのネットカフェ(これがまたすごい!)を
まわり、やっとたどり着いたのが
フェラーリというこれまた凄い名前のネットカフェだった。



名前はフェラーリだが速度はちゃりんこ以下という最悪なネット環境の店内はこちら。



その店内は(ブラジルどこでもそうだけど)冷房設定温度17度という
冷蔵庫のような場所だったので
よめさんと近所を散策することにした。
田舎町は歩いているだけで面白い。

市場の魚売り場の奥には獲物を狙うウルブーの群れ。
(ウルブーはハゲタカみたいな死肉を貪るトリなのだ)

肉売り場には、狩猟禁止のげっ歯類パッカが売られていた。

「兄ちゃんどうだい!パッカ買わないかい?美味いよ。」
「いくら?」と聞くと
「これは大物だから、80ヘアイス(4000円)だよ。」

牛の足に臓物、お化け屋敷よかスリリングなものがいっぱいある。

「おーい。なにやってんだ?」

昨日お世話になったマルコスさんが偶然通りかかった。

「次はいつ来るんだ?必ず連絡してくれよ。」

人懐っこくて優しい人が本当に多い。

小さな郊外の街をぐるっと回って帰ってくると
ちょうどモイゼスくんたちもネットを終えるところだった。

「せっかくだから街を案内するわ。」と
地元の大学や施設などを見て回った。

毎年9月、イタコアチアラでは年に一度の大規模な音楽イベントが行われる。
3日間昼も夜も行われるイベントはFECANIと呼ばれ
何万人もの人がここを訪れるのだ。
その会場がブンボードロモで、民芸品や飲食の屋台がずらりと並ぶんだそうだ。



10時半のバスに乗り遅れたわれわれは
13時半発のバスに乗って帰るのだ。

イタコアチアラとももうすぐお別れ。
ベッチさんは優しくしてくれたから余計寂しいのう。



「今度は一週間いらっしゃいね!」

「ありがとーっ!また来ます!」




ファビオラさんが指差した。

「トシミ。ほら、あの人日本人よ。」

見ると年配の女性がバスの前のベンチにひとり腰掛けていた。
かなり高齢に見えるが言葉ははっきりしている。
ふつうこのくらいの年齢の方は日本語を流暢に使うものだが
彼女はポルトガル語しか話せないようだった。
(恥ずかしいから使わなかったのかも…)



ケイコさんというその女性は
父親も母親も日本人で
ビラアマゾニアで生まれたというから
高拓生の子孫なのだろう。

家では昔は日本語を使っていたけれどもう忘れてしまったとのことだった。
ビラアマゾニア出身ということは戦前のアマゾン移民であり
戦中戦後は土地も言葉も取り上げられて相当な苦労をされたはずである。
ビラアマゾニアには8歳までいて、転々としたのち
イタコアチアラにやってきた。
もう50年も住んでいるという。

「今日はこれからマナウスで血液検査なの。明日はまたここに戻ってくるのよ。」

元気そうな顔でよく笑う。



バスはマナウスに向けて出発した。
ジャングルの中の一本道を猛スピードで進んでいく。



途中、戦後Tさん一家が住んでいたであろう
ウルブー川近くで休憩することになった。

◆ウルブー川。戦後、このジャングルの中で一生懸命生きていた日本人一家がいたのだ。


食堂のおじちゃんが言った。
「通りの向こうにも日本人が住んでるよ。サカイさんって言うんだ。」

休憩時間は10分でバスはまた走りだした。
ヒオ・プレット・ダ・エヴァを越え
日本人の移住地エフィジェニオ・サーレスにさしかかる。
マナウスまでは、あと41キロ。

どこまでも続くジャングルを見ながら
いろいろなことを考える。

移民のこと、日本のこと、
さっき読み切ってしまった森村誠一の小説のこと、

お世話になったベッチさんのこと。
やたらと人懐っこいイタコアチアラの人たちのこと。

マナウスのバス停につくと
ケイコさんが「またね!気をつけて!」と声をかけてくれた。

いつまでもお元気で。

イタコアチアラ。
必ずもう一度行かなきゃいかん場所だ。



というわけで、四日間に及ぶ濃い~ぃ旅行は終わったのでした。

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