ファゼンダに行く。その1
朝8時頃にマリオさんが現れた。
ファゼンダに行くのは午後から。
日帰りはきついぞとのことだったので現地で一泊することにした。
マリオさんは日系3世。
祖父が日本からアマゾンにやってきたのは1929年。
世界恐慌の年のことだ。
アマゾンに高拓生が入植する2年前にマウエスで
ガラナの栽培を始めた。
今はパリンチンス日伯協会の会長であり
船会社を経営し、牧場の管理もしている。
この日は午前中
建設中の3階建てのバルコ(船)を見せてもらった。
「ここが客席で、ここが倉庫。何でも運べるぜ。」と嬉しそうだ。
船の材料になっているのは
マサランドゥーバという木材で
マリオさん曰く「鉄より硬い!」
200人乗船可能というこの船は12月完成予定。
製造過程を見ちゃうと
ちょっと乗りたくなくなるほどの荒い作りだわ。
その足で寄ったのは
「キムラジーニョ」という名前の肉屋だった。
有名なサッカー選手ロナウジーニョもそうだが
『~ジーニョ』ってのは、『~ちゃん』みたいな意味。
サッカーの有名なロナウドと区別できるってのもあって
『ロナウドちゃん』って呼ばれてるってわけだ。
マナウスにも佐藤さんってガイドの方がいて
背も低くてかわいいからサトージーニョって呼ばれている。
肉屋のキムラジーニョさんは高拓生の子孫であり
出かせぎ者として4回も日本に行っている。
大垣、厚木など計15年日本に住んでいた。
その後連れまわされたのが弁護士のカロリーナさんのところ。
パリンチンス生まれリオ育ちの女性。
ルーツは中国にあり、みょうじはWONGさんだ。ヴオンギと発音していた。
まあ良く喋るおばちゃんで、
1年前に階段から落ちた事故がもとで左足を怪我し
以来車いすの生活になっている。
昼食をマリオさん&ホブソンさんと食べたら出発だ。
アマゾン川沿いにある船着き場から舟は出た。
2人乗りのエンジン付きボートだ。
月に2回ほどファゼンダに行くマリオさんだが
ふだんはバルコという乗合船でいくという。
2階建てのハンモック満載の船だ。
今日は特別に船をチャーターしてくれたってわけ。
なんていっても明日は午前8時からの授業に出なきゃいかんからね。
流れの荒いアマゾン川から高拓生が戦前入植したビラアマゾニアを左に見ながら
船はパラナドハモス川に入っていく。
とたんに波が落ち着いて静かになった。
今は乾季なので水位もだいぶ低くなっている。
川岸の大木はその身体を支えきれず倒れてしまっているものも多い。
その向こうには大きな牧場があるのだろう。
時々牛が顔をのぞかせる。
カワイルカが泳ぎ
水鳥が水面を走る。
モーターボートでぶっ飛ばしても
目的地のファゼンダまでは軽く1時間半はかかる。
もういい加減普通に船を運転するのに疲れたマリオさんは
足で運転し始めた。
「この辺には戦前から日本人が住んでいて農業をやっていたんだぜ。」
すでに強い日射しで足は真っ赤。
水しぶきもガンガン飛んでくるがお構いなしだ。
船はパラナドハモス川からアイクラッパ川に進む。
途中で寄ったのはマリオさんの釣り仲間のペドロさんの家。
物凄い大きさのトゥクナレをいただいた。
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