インディオの村訪問。⑨
バク解体作業が行われている大きな机の近くには
コンクリートの土管を切ったような手作りの水槽があり
その中にはカメやワニがいた。
誰かの所有物なのか、小さいカメの甲羅には
『M』とか『A』とかイニシャルがマジックで書かれている。
野良犬と野良猫と鶏がヒヨコが
住居のまわりをうろうろしている。
基本的に住居にはドアもないし、床は土間なので
動物たちだって自由に出入りできてしまうのだ。
その横で子どもがひとり
フェイジョン(ブラジルの豆料理)を
米にかけて食べている。
ある住居の横に
藁と金網で囲まれた動物小屋があった。
原住民の子どもたちが
ボロボロの金網の中から出して見せてくれたのはクチアという動物。
口のとがった大きなネズミのようなこのクチアをペットとして
2匹飼っているという。
クチアはブラジルの田舎ではよく食べられていた(いる?)動物だ。
近くで見たのは初めてだし、よく慣れているのに驚いた。
写真を撮ってもいいかと聞くと
死んじゃうからだめだと子どもたちはいう。
どうやら、ずっと長生きしていた以前飼っていたクチアが
写真を撮られた途端、すぐに死んでしまったらしい。
ドイツ人のダニエラさんが
「フラッシュでびっくりしたのよ。フラッシュ焚かなかったら大丈夫よ。」
といっても取り合わない。
真剣な眼差しで
「写真を撮られるとクチアは死んじゃうのよ。」の一点張りだ。
別の動物小屋にいたサルについても同じことを言われた。
「犬はOK?」「うん。OK。」
「鳥はOK?」「うん。OK。」
「じゃ、サルは?」「だめ。死んじゃうから。」
「子犬もだめ。死んじゃうから。」
とまあこんな感じだ。
住居の隅に汚れた食器や籠
ぼろぼろになった人形とともに
無造作にプラスチックのバケツが置かれていた。
その中にインコやオウムの羽根が見える。
この羽根を使って民芸品を作り、街で売る。
凄い手間のわりには大したお金にならない仕事だ。
鉄砲を担いだ若い男が
バイクに乗って通り過ぎる。
器用に木製の橋を渡り、森の中に消えていった。
これから狩りに出かけるのだ。
部落の隅にお墓があった。
ここでは土葬。
日本では火葬にすることを伝えたらビックリしていた。
「本当かい?焼いたらこんなに小さくなっちゃうじゃないか。」
とアンテノールさんが笑う。
お墓はある酋長の娘のもので、若くして病気で亡くなってしまったらしい。
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