『インディオ・ドウ①』

としみん

2012年01月09日 02:00

「朝は7時から7時半の間に来てね。船頭を頼んで向こう岸に渡るから。」
と前日ホザーニさんに言われていたので、ちゃんと時間通りいったよ。

ところが…。

ドアも窓も閉まっている。
玄関の外には昨日履いていたサンダルがあるから
まだねているんだろう。

起こすのも悪いのでしばらく外で待つことにした。
この街にしては比較的大きなレンガ作りの家は、
ずいぶんくたびれてはいるが
庭などしっかり手入れが行き届いている。
ブラジルの家全体に言えることだが
外観はともかく結構みなさん家の中は綺麗に整理整頓&お掃除しているのだ。
街の汚さと比べるとちょっと驚くぐらい綺麗なんだよ。

約束の時間から待つこと1時間。ボサボサの頭でホザーニさんが顔を出した。

「昨夜ねむれなくてね。中に入って。お茶を飲みましょう。」
どこまでもマイペースだ。

ホザーニさんには養女がいる。
今年5歳になるハイレイニとはもう4年間も一緒に生活している。
インディオ・バレ族の小さい女の子だ。
突然怒り出したり、精神状態にムラがある。
だからこそ引き取ったのだろう。

オランダから送ってもらったというお茶を飲み、
ガソリンを船に積み込んだら
いざ出発。前日行く気満々だったアナルイスさんは用事ができて行けなくなった。
船は対岸に向かって一直線に進む。

川の上を緑色のオウムの群れが森めがけて飛んでいく。
遠くの山には軍隊の大きなレーダーがぐるぐる回っている。
今日は雲も多いから比較的過ごしやすそうだ。

大晦日の日に
ボア・エスぺランサの丘の頂上からヒデミくんたちと見た
「裁判官の島」と「太陽の島」の横をわれわれの乗った小さい船がいく。

サン・ガブリエル・ダ・カショエイラのカショエイラというのは滝という意味だ。
でもイグアスの滝やナイアガラの滝を想像するとがっかりすると思う。
あれはカタラタス(瀑布)といって滝のスケールが違うんだな。
それでも急流だから小さいボートは渦に巻き込まれて事故になることも多いという。

周りを見ると子どもが運転している船も航行している。
生活のために当たり前のように子どもたちが船を操縦しているのだ。
学校には行っていないんだろう…。

「ホザーニさん。ひとつ質問があるんだけど。
ぼくがもっている本にはインディオの部族の名前がたくさん載っているんだけど
ドウ族って載ってないんです。どうしてですか?」

「本当はね、マク族っていうの。
でもマクっていう言葉は卑しいとか貧しいとか
否定的な意味が強いから使いたくないのよ。」

◆この船で対岸まで渡る。


◆船首に座るのはハイレイニ。

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