日曜。
行楽客で賑わうアマゾン川の砂浜で
一人、投網の練習に勤しむおっさんがいた。
わし:こんなに人が大勢泳いでいるところで投網なんかして
魚なんか捕まえられるんですか。
師匠:もちろんだとも。パクーにピラルク、いろいろ捕まえられるよ。
わし:ホンマですか?そうは見えないけどなあ。
師匠:なぬ?よし!お前もいっちょ、投げてみるか?
わし:いいんですか。ではご指導よろしくお願いします。
師匠:投網の猛特訓にどこまでついてこれるかな。うわははははははは。
わし:……。
師匠:まずは吾輩がお手本を見せる。
うー!やー!たー!の掛け声とともに
たー!で手を離すのだぁ。
師匠:うー!やー!たー!
わし:流石です。左足の上げ方がなんともお茶目ですね。
しかしながら師匠、ゴミしか入ってないじゃないですか…。
師匠:つべこべ言わずに練習!練習!まずは網の持ち方から教えるゾ!
わし:はい。師匠。
師匠:ここをだな、こうして、手繰って手繰って手繰り寄せる。
わし:おい!そこのサカナ!今からこの投網で捕まえてやるからな!
師匠:こらっ!真剣にやらんか!
わし:すいまっしぇーん。
師匠:こっちの端を肩にかけてと。
わし:すんません。師匠。どうしてもずり落ちてきますーっ。
師匠:仕方のないやつだな。歯で押さえておけ!
わし:あいーっ。
師匠:よし!投げてみろ。思いっきりいけ!
わし:うー。やー。たー。
師匠:なんだ。全然だめじゃないか!もう一回教えるぞ。
わし:はいー。
師匠:まずは口でしっかり押さえておけ。
わし:ふがふがふが…。
師匠:返事は?
わし:ふがふがふが…。鎖が歯のエナメル質に当たって痛いっす…。
師匠:我慢せい。よし!もう一辺投げてみろ!
わし:うー。やー。たー。
師匠:あー。だめだ。だめだ。だめだ。
そんな風に教えた覚えはないぞ。
もう一度言うぞ。腰のひねりが重要なんだ。
わし:師匠。もういい加減飽きてきました。帰りたいっす。
師匠:最後のチャンスだ。やってみろ!
わし:うー!やー!たああああああああああああ!
師匠:おおお。いいじゃないか。
こんなに短期間でマスターするやつはそうそういないぞ。
わし:いええええええええい!
師匠:後ろ姿がちょっと長州小力みたいだがよく頑張った。
ところで獲物はかかったのか?
わし:はい!師匠。無事に捕獲しましたー。
アマゾン川のほとり、日曜の昼下がり。
終わりなき投網修行は、まだまだ続くのであった。
今日のBlogは、95%ノンフィクションであります。