6月8日
日系人で浜松にも住んでいたというネイラさんが
郊外にある親戚の家に連れていってくれた。
ジャングルの中の広大な土地にぽつんと建てられた
素朴な木造の家に家族は住んでいた。
庭には猫も犬もアヒルも鶏も一緒に放されている。
庭の奥には川が流れていて
簡単に小舟で釣りにも出かけられるのだ。
この家に住む息子さんが今から炭を焼くというので見に行った。
土を盛って作った簡易窯の中には
ギッシリ丸太が詰まっている。
ガソリンをぶっかけて野焼きが始まった。
「トシミ先生。釣りに行きましょう。」
とチエさんに言われ
小舟に乗り込むとそこにはワニの子供の死骸があった。
チエさんも日本語教室の生徒だったひとだ。
もともと彼女はボリビア移民の子孫なのだが
日本での出稼ぎ中に今のご主人と知り合い
現在はパリンチンスに住んでいる。
長いこと日本に住んでいたことのもあって日本語もよくわかるんだ。
ネイラさんの旦那さんであるハイムンドさんが
舟を漕いでくれた。
もう一艘の舟にはウエンデルくんとヘナタさんが乗り込む。
みんな日本語の生徒だった。
3年間毎月通ってきたパリンチンスだけど
こうやって生徒たちとの時間を持てたことはあまりなかったんだな。
ホテルと学校の往復で
夜、屋台で食事したくらい。
だから、今日は修了式までの時間を思い切り楽しむぞ。
残念ながら釣果ゼロで庭のところに戻ってきた。
この家のご主人が一言。
「上を見てごらん。」
うわ!
そこには、木の上に紐でつながれた巨大なワニの頭があった。
「数カ月前にこの近くで捕まえたんだ。
もっと近くで見たかったら下におろしてあげるよ。
その代わり、臭いぜ!」
ずるずるずると
紐がゆるんでワニの頭が近づいてきた。
くっさ!
たしかにメチャクチャ臭いわ!
この家のおばあちゃんは
マッサージの達人だという。
わしらがお邪魔していた間にも
自転車で転んで首を捻ったという少年が治してもらうために
父親に連れられてやってきた。
2へアイス(100円)払って
得体のしれないオイルを塗られておる。
「街に住んでた頃はサッカー選手やアスリートのマッサージもよくしたのよ。」
「おお。そうですか!わしもお願いします!」
アマゾンの秘薬オイルを塗られ
マッサージが始まった。
けして強くないんだけど
パチパチパチとボタンをはめるように
背骨を押していく。
「遊びに来たんだからお代はいいわよ。」
おばあちゃん。ありがと!
飲み物を買いにいったご主人が帰ってきた。
「昼飯のために肉を焼くよ。ブラジルではいろいろな肉を食べたかい?」
「えーと、パッカ(カピバラみたいな小動物)にジャバリ(イノシシ)、
アハイヤ(エイ)にジャブチ(亀)は食べましたが
アンタ(バク)は食べ損ねました。
タトゥー(アルマジロ)は食べたかったんですけど
そのチャンスがなかったんです。」
「タトゥーだったら隣のうちのやつが捕ったばかりだから、聞いてきてやるよ。」
数分後。
「あったよ!ほら立派だろ!?」と持ってきたのは
まごうことなきアルマジロだった。
「これをさばいている間にサンペドロ学校に行っておいでよ。
亀がいるんだ。」
「亀?」(これまた食べるのかな?)
ネイラさんが
「わたしは行かないわよ!食べたくなっちゃうから。」って言ってる。
家の前の舗装された道の突当りに小さな学校があった。
学校の名前はサンペドロ学校という。
大きなカスターニャの樹がある庭の隅に
樽のようなおおきなプラスチックの青いバケツが並んでいる。
中を覗くとすごい数の亀がいるではないか。
左のバケツは赤ちゃん亀。
右にいくにしたがって成人亀になっていく。
学校の先生が現れた。
「この学校で育てた亀を
アマゾン川の支流に放流するっていうプロジェクトをおこなっているのよ。」
「わたしの故郷(浜松市)でもウミガメの産卵を手伝うプロジェクトがありますよ。」
「まあ、それは素晴らしい!」
「頑張って続けてくださいね!」
他の先生たちにも挨拶して学校をあとにした。
庭に戻ってきたら食事の準備が整っていた。
網の上にはアルマジロの頭と尻尾が乗っている。
胴体はマッサージしてくれたお母ちゃんがバラバラにして
煮込みを作ってくれた。
実は、こういったジャングルの希少動物の捕獲は禁じられているのだ。
だからあまりおおっぴらにはできんのだが
もう食べちゃったもんねえ。
捕まえにいったわけでもないし。
たまたま偶然となりの家にあって料理してくれたから食べたという話。
さあ、肝心の味なんだが
いわゆる獣の味だわ。
好きな人にはたまらんけど
嫌いな人にはたまらん味だな。(おもろいな日本語は!)
わしはおかわりしたあるよ。
正直美味しかったっす。
尻尾も食べるだよ。
