コウモリの洞窟を抜け、さあ帰りましょうということになった。
しばらくグルグル歩いたが、また元の洞窟のところに戻ってきてしまった。
ルイキくんが小さい声で呟いた。
「ここはどこですか。」
え?
うひゃー。
もしかして…迷った!?
先日マナウスのアマゾナス劇場でおこなわれた
アマゾナスフィルムフェスティバルで観た映画を思い出した。
日々の農作業や家の手伝いに嫌気がさした少年が
ジャングルの中でのキャンプに参加する。
そこで恋した女の子に花をあげるために
ジャングルの中に踏み込んだが帰り道がわからなくなり
そのまま何日も放浪した挙句に亡くなってしまうという
すごいストーリーの映画だ。
頼むぜルイキくん!
しばらく歩いてから
「あ。道に出ました。」
ホッと一安心。われわれは帰路につくことができた。
帰り道もいろいろな生き物が待ち受けている。
木の葉のような形の昆虫。
ムトゥカは血を吸う虫だ。
ルイキくんは、カエルも上手に見つけて
素手で素早く捕獲する。
「コウモリの研究は面白い?」
「とても面白いです。世界には1000種類ほどのコウモリがいて
そのうち200種類がブラジルにいます。
コウモリの羽根の部分は透明で血管が見えるでしょう。
その仕組みを研究することで医学にも役立ちます。
コウモリは、糞をいろいろなところに撒き散らすから
色々な木の種もそれに交じって
ジャングル中に運ばれていくのです。
ハチドリのように
花の受粉を手伝うコウモリだっているんです。
それを研究するのも面白いです。」
「新種のコウモリを発見したらルイキコウモリとかいう名前になるの?」
「自分の名前はつけられなせん。
トシミ先生とミサキ先生の名前をつけます。」
ほんまかいな。
「じゃあトシミサキコウモリにしましょう。」とミサキ先生。
お喋りしながら1時間歩いてやっと入り口に戻ってきた。
パラジッタという寄生植物を見て
鳥の巣を見て
牛たちにお別れを告げてファゼンダを後にした。

(これが寄生植物。大木に巻きついて養分をとるのだ)
マデイラ川では釣りをする少年たちの姿が見えた。
「何を釣ってるの。」と聞くと
あのアマゾンのおそろしい魚カンジルーを釣っているのだという答えが返ってきた。
時計の針は午前11時半を指している。
われわれは、アラブ料理の店で昼食をとることにした。
ブラジルでは珍しい生肉を使ったキビクルーは絶品。
セントロにさしかかると
物凄い雨が降り始めた。
嗚呼、ジャングル歩きの最中に降られなくてよかった。
それにしても濃い半日だったな。
貴重な体験をさせてくれたルイキくんに感謝。
さあ、午後からは
ライザさん、アルベルトくん、ナターリャさんを迎えての勉強会だ。