ここは、『アウデイア・セントラル・カリチアン』
カリチアン族の中心部落である。
4つある部落の中でも最大規模のものだという。
集会場であるマロッカという建物は数年前に崩れ落ち
その残骸がまだ残っていた。
われわれは、比較的新しい集会場に荷物をおろすことにした。
1時間40分ほどの車の旅とはいえ
窮屈だし揺れるしで結構ストレスフルだ。
トイレが目に入った。
あるんじゃん!
とばかりにドアを開けると
物凄い悪臭と大量の虫。
一応水洗だが壊れていて水は流れない。
汚物にまみれた便器にむかい、吐き気と闘いながら用を足す。
うわ。ここで一晩生活するのか…。
こりゃ女性はもっと大変だぞ。
インディオ部落での旅を計画した時に心配したのは
トイレ、風呂、食事。この3つだ。
風呂は一日二日我慢できるだろう。
食事も水やパンや缶詰を買いこんできた。
トイレも最悪ジャングルの中で用を足せばいいだろうと考えてきたが
現実は甘くなかった。こりゃ汚すぎるゾ。
気が重くなってきた。
珍しく胃がきりきり痛んできて、身体もなんだか重い。
さて、到着したわれわれが最初に案内されたのは
部落の一番奥にある小川(イガラペ)だった。
その中州には高い一本の木がそびえていて
無数の鳥の巣がぶら下がっている。
「ジャッピンの巣だよ。」とアンテノールさんが解説する。
「そうそう、インディオの言葉って
日本語と似てる言葉がいろいろあるんだよ。
『はい』はインディオの言葉で私の兄って意味。
『つるた』はバナナって意味だ。」
ほんまかいな?
ある家の前を通るとこれから釣りに向かうという男が顔を出した。
その骨格や顔つきは驚くほど日本人に似ている。
アンテノールさんがいう。
血筋としては彼が正統なカリチアン族の血統なのだ。
現在の酋長はそうでもないらしい。なんだか複雑だな。
アンテノールさんが真剣な顔で言った。
「これから鐘を鳴らして部落のみんなを呼ぶぞ。
きみたちの面接を行うのだ。」
いやあ。どきどきするわ。
