ボリビアとの国境の街グアヤラミリンへ続く国道を走る。
発電所からの高圧電線の鉄塔が顔を出す。
それを過ぎたら、平和でのどかな牧場の風景がどこまでも続く。
今回の旅にはドイツ人のダニエラさんも同行した。
アンテノールさんとともに現れた白人女性だ。
彼女は、アフリカ、インド、中国などの貧困地域をまわって
レポートを書いているという。
今回は完全にプライベートな一人旅だ。
アスファルトの道を1時間近く走り
牧場の中の赤土の道に入る。
「ここだけじゃない。
30メートル先に新しい部落の入り口があるよ。」とアンテノールさん。
とてつもなく広大なジャングルが居住地域だから、部族が移動することもあるらしい。
ちなみにロンドニア州だけで日本の本州ほどの大きさがあるのだ。
美人女性といっしょでご機嫌のアンテノールさんは、今日はいつになく饒舌だ。
「日本では金ぴかの寺に行ったよ。(金閣寺のこと)あれは凄かったね。」
「ほら、あそこに見える建物。あれは刑務所だよ。すごく悪いやつらがいるんだ。」
「日本人てのは凄く熱いプールに入るんだ。(風呂のこと)信じられないよ。」
「フォルタレーザには、ユウタハラグという日本人がいて知り合いなんだ。」
ジャングルの入り口でアンテノールさんが言った。
「白人たち(非原住民)に、でかい木はみんな取られちゃったよ。」
かつて、この土地はマホガニーやセレジェイラなど
高級木材の不法伐採者の餌食になった場所だった。
確かにこのジャングルの入り口付近には大木は見当たらない。
赤土の道を三菱の4WDが奥へ奥へと進む。
両側にそびえる緑のジャングルに赤土の道。
その水たまりに赤と白のムルクンの花が落ちている。
なんとも幻想的な風景だ。
トカゲが道路を横切り、紫や黄色の蝶が舞う。
しばらく行くと
『ここから先許可なく立ち入り禁止』の看板が見えた。
われわれは、FUNAI発行の許可証を持っていないのだが
インディオの代表といっしょなので入ることが許されたのだった。
雨によって落ちてしまった橋を迂回すること2回。
赤土でできた道の下を土管が通してある場所もあるが
何か所かは崩れ落ちてしまって通行不可能になっていた。
それを迂回するためにジャングルの中の細い道に入っていく。
側道には新しい芽が出ている。
ジャングルの中、人間の手によって整地された赤土の道が続く。
その側道に顔を出した芽は、
現代社会の侵入を食い止めるかのごとくしぶとく力強い。
数年前まではこの道もなかったので
部落までは2~3日かけて、
ジャングルの中を進まなければならなかったという。
ポルトベーリョ市街地を出発して1時間40分。
右手に黒い枯れ木が並ぶ変わった風景が目に飛び込んできた。
数年前に山火事で焼け野原になった森の姿だ。
遠くに藁で葺いた独特の形をした民家が見えてきた。
ついに部落に到着したのだ。
