1時間後。
「子どもたちに歌を歌ってくれるかしら。」
というホザーニさんのリクエストに応えて何曲か弾いた。
ホザーニさんも一緒にギターを弾き
マルコスがタンバリンをたたく。
奥で遊んでいた女の子たちも何事かと興味深げに近寄ってきた。
演奏の後ホザーニさんが話し始めた。
「わたしはサンタカタリーナの出身で家は貧しかったの。
その後ミナスジェライス、セアラ、マナウスと教育関係の仕事をしてきて
このサン・ガブリエル・ダ・カショエイラに辿りついたってわけ。
インディオ・ドウの学校には現在先生が5人いるの。
トゥッカーノ族やダウ族の先生もいるわ。
数学や地理(アマゾンのことブラジルのこと)それから
言語(ポルトガル語とインディオの言葉)を教えているのよ。
ブラジルには資源もお金もあるのに
一部の特権階級の人たちが全部持っていってしまうの。
子どもたちへの基金や教育費もよ。
貧しい人たちやインディオの人たちにはいきわたらないの。
本当に酷くて辛い話だわ。」
楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。
「あなたたちは本当に特別の人たちだから、
かならずまた会いにきてちょうだいね。」と言われ
壁に似顔絵とともに
「必ずまた来ます!」というメッセージを書いた。
ホザーニさんは夜の会議のため
そして別の部落への訪問のため
この日は部落に泊まるという。
岸にある船着き場までマルコスと一緒に見送ってくれた。
女の子たちは対岸まで一緒に行ってくれるんだそうだ。
お別れは悲しいなあ。
手を振るホザーニさんがどんどん小さくなっていく。
彼らに対してわしらはどんな形で力になれるんだろう。
そんなことばかり考えていた。
時刻は6時。
6時半にはマナウスでお世話になっているアレックスの実弟アントニオが
滞在先のホテルまでやってくる。
次の日にはジャングルトレッキングに連れて行ってくれるのだ。
急いで帰ろう。
約束の時間から30分遅れてアントニオが現れた。
笑顔はアレックスそっくりだ。
簡単に自己紹介したり、次の日の予定を決めると
彼は帰っていった。
わしらはアントニオのお薦めのちょっと汚い食堂で夕飯を食べることにした。
看板もないようなくたびれた店だけどわしは前から気になっていたんだ。
店主が言った。
「わしゃここで40年この店をやっているのじゃ。」
息子も現れた。20代後半か30代かもしれない。いい恰幅をしている。
「父さん!このひとは大晦日に浜辺で歌ってたひとだよ。」
おおお。嬉しいではないか。
しかもこの店の料理がまた美味かったのだ。
店主も息子も釣りに連れて行ってくれるという。
うーむ。最終日に時間があったらお願いしよう。ぜひ行きたいところだ!
◆マンジョーカ芋からどうやってファリーニャを作るのかの講義。
◆スターフルーツを食べるマルコス。
◆セッションスタート。
◆マルコスともお別れ。
◆もうじき出発。
◆ホザーニさんとマルコスは見えなくなるまで手を振っていた。
