式当日。
朝8時。
イラセマ先生は文化コースの生徒を引き連れて会場作り。
我々はというと郊外の「イノマタタダシ学校」へと向かった。
比較的貧しい生活環境の子どもたちが通うこの学校では
毎週みず紀先生による日本文化を伝える授業が行われてきた。
折り紙に紙相撲、ゴム飛びに日本の小学校との絵の交換会。
月に一度わしも足を運び
子どもたちと一緒に人気歌手ルアン・サンタナの歌を歌ったり
アイアイにヤングマン、アブラハムと7人の子、からだ遊びの歌で踊ったりしてきた。
日系人であるアベニウザ・トクタ校長にもずいぶん前から
「最後の授業は特別なことをして送り出したいから
トシミも必ず参加するようにね!」と言われていたんだ。
校舎の門をくぐった瞬間に
いつも無邪気で明るい子どもたちのハグの嵐が待っている。
彼らが話せる日本語は
「トシミー。オハヨー。
ミズキー。コンニチハー。
サヨウナラー。アリガトウ。」だけ。
次から次、次から次へと
抱きついて
しがみ付いて
ぶら下がって離れない。
そんな子どもたちが今日はビシっと整列してる。
アベニウザ校長がプラスチックの椅子を持ってきて
生徒たちのど真ん中に置いた。
「みず紀先生。ここに座って下さい。」
年少組の「からだ遊びの歌」からスタート。
マナウスのリエ先生のクラスでやっていたのを持ち込んだんだった。
わしらが教えた日本語の歌を子どもたちだけで
歌ってくれるなんて!
それから、先生や生徒たちのメッセージ紹介に
スライドショーに歌にダンス。
よく練習してきたなあと感心した。
もう我々の涙腺もパンク状態だ。
最後はみんなで「Y・M・C・A」を踊った。
生徒の間でも人気のある曲なんだ。
生徒たちは別れを惜しみながら帰宅し
先生方が昼食を用意してくれていた。
コジーニャ(台所担当)のひとも
先生もお掃除のおばちゃんもみんな寂しそうだったよ。
◆イノマタタダシ学園は午前クラスと午後クラスがある。全員勢ぞろいは珍しい。
◆音響施設も機材も最悪だけど心がこもった出し物が続く。
◆年長クラスになるともうほとんどの生徒が号泣。
◆アベニウザ校長(わしの横)はいつも優しくしてくれるのだ。
