午前2時半、東京を出発。
深夜の高速をポルトガル語の歌を歌いながらひた走る。
ガス欠の危機を乗り越え
(心配性のヒカルドは90%パニックになっておった)
奇麗な朝日を横目に福島県南相馬市に到着した。
まず、藤原さんが案内してくれたのは海岸地域。
田んぼか野原かと思っていた広い土地は
実は被災地だった。
震災から1年半が過ぎたかつての住宅地にはびっしり雑草が生い茂っている。
車は南相馬のボランティアセンターに向かった。
すでに駐車場には埼玉、栃木、大阪ナンバーなど
全国から集まったボランティアの車が並んでおり
約30名ほどの人たちがボランティアの受付を行っていた。
(多い日は数百名の申込みがあるという)
まだまだ瓦礫の撤去などが終わっていないのだ。
街には多くの仮設住宅が並んでいる。
汚染地域に自宅がある人たちは、じっとここで生活するしかない。
仕事がある若者や中高年の方は別の地域に出てしまっているので
ここに住んでいるのは圧倒的にお年寄りが多い。
今日の活動は、
子どもたちへの学習支援と高齢者のみなさんとのルームソックス作り。
「集会所で子どもたちの勉強会がありますから、
お子さんがいらっしゃったらぜひ参加してください。」と手分けして声かけをしていく。
MAX音楽隊のメンバーは殆どが地方出身者の若者だ。
月に2回(多い時は毎週)被災地に通って活動を続けている。
仮設住宅も地域によってはその間取りや建て方もさまざまで
隣の部屋の声が聞こえないように上手く設計されているものから
そうでないものまでいろいろ。
被災した状況は人それぞれ違うわけで
異なる地区の出身者を一箇所にまとめてしまった仮設住宅には
部屋に籠ってしまうお年寄りの健康管理や子どもたちの学習環境などのほか
まだまだ多くの問題点があるのだという。
Haro!チームはわしが学習支援、基恵&ヒカルドがルームソックス作りを
お手伝いすることになった。
MAX音楽隊をサポートしているデザイナーの西村さんと薬剤師の清水さんは、
子どもたちのために大量の問題集を用意していた。
わずか2時間の勉強会で
子どもたちの学習能力を飛躍的に伸ばすことなど不可能だけど
ふだん出会うことのない大人の人たちと会話しながらコミュニケートしていくことは
精神的にも非常に効果が高いと思う。
MAX音楽隊の若い男の子りょうくんも、
上手くバランスをとって子どもたちの相手をしている。
子どもたちの言葉遣いは決していいとは言えないけれど
顔の表情を見ていれば
どれだけ音楽隊のお兄ちゃんお姉ちゃんたちを信頼しているかがよくわかる。
学習支援の時間が終わりに近づいた時
「としみんさん。別の集会場にどうぞ。」と呼ばれた。
藤原さんが地元の新聞社「福島民報」の記者さんを紹介してくださったのだ。
インタビューを受けたあと、
ルームソックスを作るおばちゃんたちの前で
ブラジルからのメッセージを紹介する時間をいただいた。
実際にブラジル・アマゾン地域のみなさんが書いたメッセージを
見ていただき、ヒカルドにもポルトガル語で読んでもらった後、翻訳してもらった。
涙を流して「ありがとう。」と言ってくださったおばあちゃんたちも大勢いたのだ。
一番前で聞いていた女性が言った。
「この地域からも大勢の人が移民としてブラジルに渡ったんですよ。
実はわたしの弟も20歳のときに渡りました。あれから50年、音信不通なんです。
いまどうしてるんかな。」
見つかる可能性は僅かだけど、ブラジルに戻ったらなんとかして探してみたいと思う。
お昼ご飯はカレーにおこわにお漬物をご馳走になってしまった。
これがまたどれもすごく美味しくて感激したよ。