ピラニアとカンジル。

6月10日 

朝食はタピオカ焼きにバナナにスイカ。
毎回同じメニューだけど、パリンチンスのこのホテルの朝食はいつも楽しみだった。
ホテルの姉ちゃんは途中辞めたりしていなくなったこともあったけど
ほぼ3年間毎回わしの胃袋を満たしてくれた。
彼女の作る卵焼きもタピオカもアバカシ(パイナップル)のジュースを味わうのも
今日が最後だ。

ピラニアとカンジル。

「朝8時に迎えにいくからな!」
という電話をもらったので頑張って早起きして支度していたのに
ジョゼイさんたちがやってきたのは10時をとっくに回った頃だった。

ジョゼイさんてのはアマゾナス連邦大学の教授だ。

「今ホテルの前についたぞ!」
という電話を受けて慌てて3階のいつもの部屋から下りていった。
わしが3年間お世話になったホテルは
アリアウタワーホテルという名前で4階建て。
たぶん、パリンチンス市では教会の鐘がある塔に次いで
高い建物なんじゃないか?

ホテルの隣では
土鍋を売っているおじさんがいつも日向ぼっこをしていて
「おーいジャポネース!元気か?どこ行くんだ?」と声をかけてくれる。
こんな熱帯で土鍋なんか売れるんかいな?と思って心配してたが
最近はカシャーサ(ブラジルの酒)をつくる木製の器を売り始めた。
うーむ。これまた売れそうにない…。まあいいか。
おじちゃんにもさいなら!

「なに?日本に帰るのか?また戻ってくるんだろ?」

ピラニアとカンジル。

この日はマリオ武富日伯協会会長・ジョゼイ・ルイス教授(アマゾナス連邦大学)と
アマゾナス州における移民についての教材について打ち合わせをした。
マリオさんが言う。
「これが完成したら、必ず俊美をもう一度アマゾンに呼んで記念式典をやるんだ。」
ホンマかいな?

ジョゼイさんは前から
「トシミをアマゾン川の釣りに連れていきたいんだ。」と言ってくれていた。
もうアマゾン生活も残りわずかなので、この出張中に連れていってもらうことになった。

わしらは、郊外の船着場で小型船に乗り込んだ。
転覆したら一貫の終わりなので
しっかり救命胴衣も身に着ける。
船外機を操るのはジョゼイの友達のセバスチャン。
もうひとりエルトンという男が乗り込んだ。
「やつらは釣りのプロだから何でも知ってるぜ。」

ガソリンを水上ガソリンスタンドで買い込んだら
アマゾン川の対岸を目指して出発進行だ。

現在アマゾン川は、雨季から乾季へと変わる時期。
水位が非常に高い時期なので
あちらこちらに水没した家屋が見える。
小学校も半分水没してる。
川の中にすっかり隠れてしまったジャングルの樹の頭を
うまくすり抜けて小型船はものすごいスピードで進んでいく。

ピラニアとカンジル。

「アマゾンの強い日差しで日焼けするからこれを被りな。」と
ジョゼイが迷彩色の帽子を渡してくれた。
いやー。ジョゼイの薄い頭が日焼けするほうが心配だぜ。

ピラニアとカンジル。

迷彩帽子にサングラスにひげに救命胴衣。
ど怪しい!

ピラニアとカンジル。

パリンチンスの街がどんどん遠ざかる。

30分ほど爆走したところで船は対岸のさらに奥に入ったところ
二つの流れの合流点でエンジンを停めた。
セバスチャンが櫂を手にした。
ジャングル全体が水没しているから
草むらやらなんやらで水面が見えなくない。
そこをうまいことポイントを探しながら舟は進んでゆく。
「魚の餌にする魚を捕るよ。」と投網投入。
「しばらくしたら何かひっかかるだろう。」
投網は二ヶ所に仕掛けて、舟はさらに奥に入っていく。
「いたたたたたあっ!」
右の人差指に鋭い痛みが走った。

アリだ。

頭が三角の小さいアリがびっしり木の幹に張り付いている。
そのうちの何匹かが舟の中にも落ちてきたのだ。
ジャングルの中ではアリやクモなど小さい虫ほど厄介なのだ。

赤いランプのような実がいくつも成っている樹が現れた。
「うわ。なんじゃこりゃ!?」
「これはサマウーマの樹だよ。実が割れると中から綿と一緒に種が出てくるんだ。」
「ほんとだ!すごい!」
「ひとつ採って中身を切って見せてやるよ。」
エルトンがナイフで赤い実を切ってくれた。
大きな赤い実の中にはシルクのような綿毛がびっちりと詰まっていた。

ピラニアとカンジル。

おびただしい数の綿毛がふわふわとジャングルの中を舞っている。
この綿に乗って種が運ばれていく。
よく見ると水面にも綿がいっぱい落ちている。
ジャングルの植物の生命力はどこまでも逞しい。
「魚もこの綿を食べたりするんだよな。」
とジョゼイが説明した瞬間に
大きな魚が水面を跳ねた。
「ほらね!」

「さあ、そろそろ網に魚がかかっただろう。」
「え?もう?ずいぶん早いねえ。」

網にかかっていたのはピラニアにマトリシャン。
指を噛まれないようにうまく押さえつけて
ナイフで目の上を潰して殺してしまう。
ピラニアは小さくても油断大敵なのだ。

ピラニアとカンジル。

「さあ、このピラニアを餌にして釣るぞ。」
ジョゼイが糸と針とピラニアのかけらの肉を渡してきた。
おおお。竿なしかい!
ところがこれが面白いように釣れるのだ。
まあ、釣れるのはピラニアばかりだがね…。
黒いのに赤いのに黄色いの。
全部ピラニア。

ピラニアとカンジル。

ピラニアとカンジル。

ピラニアとカンジル。

「あ。変なのが釣れた!」
「おお。そりゃカンジルだわ。」
こいつもアマゾンの恐ろしい魚とされている。
なんでも人間の穴という穴に入り込んで
中のものを食べてしまうらしい。

ピラニアとカンジル。

エルトンが昼飯を食べ始めた。
マカロニにご飯に鶏肉。
「トシミも食べるかい?」
うー。余りにもまずそうなので遠慮しといた。

「よし。ポイントを変えるぞ。ここからはリールで釣ろう。」
合流点に戻ったところで、ジョゼイが早速ナマズを釣り上げた。

ピラニアとカンジル。

日差しはますますキツくなってきた。
「そろそろ帰ろうか。」
何処をどう帰るのか方向なんてよくわからないが
船頭は大したものだ。
ジャングルの中の近道を抜けて
パリンチンスの街が見えるところまでやってきた。

いやあ。楽しかった!
ありがとジョゼイ!いつかまた釣りをしにパリンチンスに戻るぜ!
夜はイラセマ先生&エリコ先生と最後の晩餐をピザで。
寂しくなるなあ。

ピラニアとカンジル。


同じカテゴリー(としみんの日記)の記事
Blog引っ越しー。
Blog引っ越しー。(2014-03-21 13:43)

さうーじ!
さうーじ!(2014-03-19 06:11)

ヴィクターと呑む。
ヴィクターと呑む。(2014-03-19 05:43)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
ピラニアとカンジル。
    コメント(0)