『インディオ率99%の街』

12月27日。

今日から夏休みだ。
南半球に位置するブラジルは
日本とは季節が逆になるので12月なのに夏真っ盛りというわけ。
ショッピングセンターなどのサンタクロースは
この暑さの中、一日中着ぐるみを着ていなければいけない。
白いひげの下は汗だくのはずだ。

そんなブラジルの南のほう、わしが住んでいるマナウスは
赤道から3度しか離れていない。
そのため、冬は無く一年中夏なので
ここアマゾナス州は
休みといえばいつでも夏休みなんだ。

さて、夏休み=正月休み。

どこに行こうかと数か月前から頭を悩ませてた。
どうもわしはこういう休み中の計画を立てるのが下手。
小さい脳みそをフル回転させた。

ナタウもいいボニートもいい。
リオデジャネイロもポルトアレグリもいい。
えいやっと海外に足を伸ばすのもいいな。
でもさあ、せっかくアマゾンにいるのだから
もっとディープなアマゾンにいくのもいいかな?と思ったのだ。

ディープなアマゾンって…?
うーむ。どこがいいんだろ?

ガイドブックやインターネットで探すと
「テフェー」という街が浮かんできた。
マナウス市から672キロ離れた人口65000人の街だ。

1539年にスペイン人のフランシスコ・オレリャナが
アマゾン川を探検し始めたとき、女性の戦士に攻撃された。
これがギリシア神話のアマゾナスを連想させたため
川の名前がアマゾナスになったんだそうだ。
1686年に創立された「テフェー」は
アマゾナス州の中でも最も古く、
ソリモンエス川の中流に位置している。

そして、もう一つの候補が
「サン・ガブリエル・ダ・カショエイラ」市。
こちらはネグロ川の上流に位置している。

いつもお世話になっている旅行会社ATSの島さんに相談した。
欲張りなわしは、両方行きたかったんだが
二つの都市を結ぶ交通手段がないため、
どうしても一度マナウスに戻らなければならない。
時間や予算を考えると
どちらかに絞ったほうが楽しめるんじゃないかということだった。

マナウス市には
ネグロ川とソリモンエス川、二つの川の合流点がある。
ネグロ川の水は酸性が強く、その名のとおり黒い色をしている。
水温は約22℃。
一方のソリモンエス川はというと、
川の色はコーヒー牛乳のような黄土色。
栄養素も豊かで水温は28℃とやや高めである。
水温も速さも異なるこの二つの川は
混ざり合うことなく約6キロに渡って流れる。
触ってみるとその水温の違いにびっくりするほどだ。
以前案内してくれた船頭さんは
「こっちがコカコーラの川で、こっちがファンタオレンジね。」
って説明してくれたけどファンタオレンジには見えなかったよ。

ネグロ川のサン・ガブリエル・ダ・カショエイラにするか。
ソリモンエス川のテフェーにするか。

迷った挙句、最終的に選んだのは
「サン・ガブリエル・ダ・カショエイラ」。
アマゾナス州の北西部にある人口35000人の街だ。
かなーりマイナーなところ。
『地球の歩き方』には、地名さえも載っていない。
テフェーの名前がかろうじて地図に小さく載っているだけ。

ちなみにマナウスからはネグロ川を遡ること1064キロの距離だ。
(直線距離だと858キロ離れている)
そんでもって、この街の住人は90%がインディオで10%が軍隊という
すごい人口構成になっている。

ここは、コロンビアとベネズエラの国境に位置しているので
麻薬などが入りこまないように軍隊もしっかりチェックせねばいかんのだ。

2011年12月22日付けのインターネットサイト「アマゾンファイル」には
こんなことも書いてあるほど

『ブラジル人約半数、アマゾン地方における外国の侵略を警戒』

 経済適応調査院(Ipea)によると、
国民の50.2%が、20年以内に豊富な資源を略奪するために
アマゾン地方に外国が軍事的侵略を行うと思うと答えていることが分かった。

 同調査院はブラジルの212市町村の3796人を対象に調査を実施。
地方別では北部66.1%、南東部50,3%、中央西部50%、
北東部48,3%、南部44,9%が外国による侵略の可能性に危機感を示した。

・・・・・・・・

この調査結果が疑心暗鬼なのかどうかはともかく
それだけ国民の関心も高いわけで
アマゾン地域に位置する国境沿いの軍隊は大変重要な意味を持っているのだ。

ある本によると軍隊は、
外からの人たちなのでそれを差し引くと
サン・ガブリエル・ダ・カショエイラに住む人の
99%がインディオ系だという。
なんと、ブラジル全国にいるインディオの9%が
この市の保全地帯で生活しているらしい。

ふだん、わしはUFAMって大学のミシェーリ先生に
ポルトガル語を教えてもらっているのだが
ある日、教材としてミシェーリ先生がもってきた教材が興味深かった。

2005年11月21日付の新聞記事によると
「サン・ガブリエル・ダ・カショエイラ」で
わずか3ヶ月の間に20人の思春期の若者たちが自殺したという。
事件後、三人の警察官、二人の心理学者
そして、社会活動の専門家が
予防、調査、さらに事実確認を強化するために送り込まれた。
サン・ガブリエル・ダ・カショエイラの警察署長は軍隊にも援助を求め
12歳から14歳の自殺した若者たちの家族を調査した。
調査結果によると少年たちの家族が抱えるアルコール中毒に問題があるとのことだった。
またこの地域では、貧困が深刻な問題であるとともに
街には黒魔術の儀式に参加している若者もいるという噂もある。
(noticias.terra.comより 対訳はわしがした)

いったいどんなところなんだ?

また、今回の旅行を決めたあとにわかったことだが
地元マナウスのバンドのヴォーカリストで、最近このBlogにもよく登場する
モイゼスくんは、かつて「サン・ガブリエル・ダ・カショエイラ」の住人だった。
彼の父親は、現在UEAという大学で
言語学(インディオの言語)の教授をしているんだが
以前、研究のために家族みんなで
サン・ガブリエル・ダ・カショエイラに住んでいたというのだよ。

モイゼスくん曰く
「トシミがサン・ガブリエル・ダ・カショエイラやインディオに
興味をもってくれてなんだか嬉しいよ。(彼は白人系のブラジル人)
ぼくが少年時代に住んでいた頃は、本当に陸の孤島でね、
サンパウロなどで採れる果物なんかはほとんど入ってこなかった。
10歳までリンゴやぶどうを食べたことがなかったよ。
自殺多発の話だけど
市の有力者の息子が滝で死んだのを追って自殺した若者が多いって
聞いたこともあるよ。
なんでもブラックメタル(黒魔術などを扱った音楽)も影響してるらしいね。
アルコール依存は結構深刻でね
街でエチルアルコールを飲んでるこどもを見た時はびっくりしたよ。」とのこと。

ほほう。また凄いところがあったもんだ。

不安になりつつも
俄然、盛り上がってきたサン・ガブリエル・ダ・カショエイラ行きだが
そこでなにをするのかなんて
予定なんぞなんも決めていなかった…。

12月27日から1月6日までゆっくり過ごすということ。
行きは高速艇で帰りは飛行機。
あとはホテルを予約しただけで
ちゃんとした知り合いも何もないままに出発の日が来てしまった。
予定を立てようにも資料が何もないっていうのが本当のところ。
ホテルもインターネットで探したけれど情報ほとんどなし。
観光名所もこれ!というものがないんじゃないかな?

まあ、インディオが多くてアマゾナス州の隅っこってだけで
わくわくして決めちゃったんだからしょうがない。

行き当たりばったりの旅だけど、まあ、なんとかなるでしょう。

『インディオ率99%の街』
◆マナウスの港で出港を待つ船。乗りこむ人たちの行き先も人生もさまざまだ。

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