出発から1か月ほど前、11月の終わり。
マナウス市内にある
ガイドブックに載っているような有名な港から
すこし外れた小さい港にわしはいた。
高速艇のチケットを買うためだ。
『サン・ハイムンド』というその港の近くは
マナウスの中でもずいぶん治安が悪いところらしい。
港までいくには結構な覚悟がいるのだよ。
ちゃんと舗装された市道から外れて
相当な悪路を数百メートル通らないと港にたどりつけないのだ。
ゴロゴロと石は転がっているし、凸凹だし、ゴミだらけだし、
ぬかるみにはまったトラックは動けなくなってるしと、
道路の状態は言葉で表せないほど最悪だ。
「サン・ハイムンドの港までお願いね。」とわし。
タクシーの運転手も
「しょうがないなあ」という顔でしぶしぶ港まで送ってくれた。
この運転手さん、まず行先を間違えて別の港に行っちゃったから
その穴を埋めるためにももうちょい頑張ってもらわなきゃいかん。
すごい凸凹道を通って港に着いたときはハイタッチ状態だったよ。
仕事柄仕方がないとはいえ
この運転手はもう二度とこんな道通りたくないだろうな。
道路くらい綺麗に舗装すればいいじゃないかと思うかもしれないが
この港は、乾季にのみ使用する簡易的な港なのだ。
舗装なんぞしている暇はない。
乾季にはこの道を使うんだし、雨季には沈んでしまうんだから。
そういえば、いつもお世話になっている西部アマゾン日伯協会の
木場さんが言ってたなあ。
「サン・ハイムンドの港で船を降りたら
左には絶対進むなって昔から言われてるんですよ。
左側には危ないやつらがいっぱい住んでるからね。」
そんな危ない地域に建つ木造の家は高床になっているが
雨季になったら、
アマゾン川の中に家ごと水没する場所もあるのだろう。
柱や壁板が根腐りしているところもある。
マナウスの住宅はほとんどがレンガ造りだ。
木造の手作りの家はどうも見ていて危なっかしい。
サン・ハイムンドの港で
一人300ヘアイス(約15000円)のチケットをよめさんの分と2枚買った。

◆サン・ハイムンドの港近くの風景。木造の支柱部分は雨季には水没する。