午後3時にわしらの乗る高速艇はサン・ハイムンドの港を出発する。
午後2時から乗船できると聞き、あらかじめタクシーを予約しておいた。
時間きっかりに現れたのは、
なんと(!)偶然にも1ヶ月前に超凸凹道を往復してもらったあの運転手だった。
「こんにちは。あ。どーも。久しぶり。えーと。サン・ハイムンドまで。」
と告げたときの運転手の複雑な表情をみなさんにお見せしたかった!
「え…。また?まじかいや!?」
「運が悪かったねえ。すまんが港まで行ってくれや。」
「OK。でもなあ、今日は雨がすごいしなあ。道は悪いしなあ。」
とかなんとかぶつぶつ言ってる。
今日は、港の手前で降ろされて歩かされるのかな?と気をもんだが
港の近くに来ると、雨は奇跡的に小雨になった。
市道から外れて例の凸凹道に入ると
反対側からは別のタクシーが港からの客を乗せてこちらに向かってくるところだった。
他のタクシー会社が港まで行ってるんだからここで客を降ろすわけにもいかんだろ。
運転手は観念したらしく港に向かって悪路を進む。
とはいえ、道路のコンディションは、本日も超最悪で
細心の注意を払って運転していても
車の腹をこすってしまう。
そのたびに「ああ。」「おぅ。」「あはーん。」という
運転手の溜息が聞こえてきてなんだか悪くなってしまう。
なんてったって前回、ビールを満載したトラックが
ぬかるみにはまって動けなくなっているのを一緒に見てるからねえ。
それでもなんとか港に到着した。
おじちゃん。ようがんばった!再びハイタッチ。
ケチなわしは、ふだんは絶対余分に払ったりしないんだが
今日は別だ。
「これでビールでも飲んでくれい。」
とちょっと多めにタクシー代を払った。
『Taylor Noguchi』という名の
どこかで聞いたことのある名前の船に乗り込んだ。
席は後ろから三列目。
出発の3時まではまだ1時間もある。
すでにエンジンもブルブル音を立てて出発に備えている。
やはり重油のにおいがきついな。
船内は空気もあまりよくないので船の外に出ることにした。
軍隊の基地がある
サン・ガブリエル・ダ・カショエイラ行きだからだろうか。
船着き場には軍服の姿も見える。
数独の本を売りに来るおじさん。
映画の海賊DVDを売り歩くおじさん。
肉の串焼きを頬張るカップル。
食料や荷物を積み込む人夫たちが忙しく往復する。
雨は小降りながらまだ止みそうにない。
時刻は3時。もう一度乗り込む。
動かない。
待つ。
待つ。
待つ。
待つこと1時間40分。
午後4時40分に高速艇はやっと出発した。
これから27時間の旅なのに
港には2時間40分もいたのだ。
どっと疲れそうだがやっと出発できた嬉しさのほうが大きかった。
隣の席のおじちゃんは
マナウスから仕事のためにサン・ガブリエル・ダ・カショエイラまで行くのだそうだ。
教会で働く知り合いを訪ねていくらしい。
◆小雨の中、船の外で出港を待つ。左後方に見えるのが高速艇(ランシャ)だ。
◆港の反対側はこんな景色。怪しげなバーもあり、休みなく陽気な音楽が流れている。
