今年完成したばかりのリオネグロ大橋の真下を通り船は進む。
パリンチンスの帰りに壊れた船と違って
今度の船は超快調だわ。めっさ速い。
マナウスの街が、ポンタネグロが、リオネグロ大橋が
どんどん遠ざかっていく。さらばマナウスーっ。
雨はすっかり上がってしまい
船から見える夕陽も鮮やかだった。
疲れていたのでせまいシートでも
ぐぅぐぅかぁかぁすぅすぅ眠ってしまった。
数時間後に起きた時は、窓からジャングルの空に広がる満天の星が見えたよ。
オリオン座の真ん中の三つの星は
ポルトガル語でトレスマリアス(3人のマリアさま)というのだそうだ。
日本にいた時は気がつかなかったが
トレスマリアスの周りにあんなに沢山の星があるなんて…。
思わず外の後部座席に移動したくなった。
もっと沢山の星を観たいじゃんか。
後部座席には、売店のおばちゃんとその旦那さんが
仲良く一つのハンモックで眠っていた。
その下のソファーには別の店員がねてる。
また別のソファーにもおじちゃんが座ったまま眠っていて
後部座席は船のスタッフに完全に占領されていた。
星なんてまったく見えやしない。
おまけにエンジンの真上なのでおそろしいほどの爆音だ。
それでも外の空気を吸えるし、
身体も伸ばせるのでしばらくそこにいることにした。
時刻は午前4時45分。
船は最初の港である『バルセロス』に着いた。
ここにはエンゼルフィッシュ、ディスカス、ラミーノーズテトラなど
約30種におよぶ観賞魚が生息しているという。
毎年1月の最終週に行われるこの街の最大行事は
その名の通り「観賞魚まつり」。
山も川も綺麗なところなんだろうけど
真っ暗で何も見えない…。
もう一度せまい座席に戻り、眠りについた。
朝は、生憎の曇り空で
アマゾン川での日の出にはお目にかかれなかった。
船は快調に進んでいく。順番を待って朝食を取る。
ハムとチーズのパンにフルーツにコーヒー。
いつものブラジル食だわ。
お腹もいっぱいになったわしは、
船の先頭に出て景色を楽しむことにした。
乗船したときから気になっていたんだが
船内に一人長髪の男性がいた。
ハイキングウォーキングのQちゃんみたいな顔立ちで
身体もがっちりしている。(ダイエットしてかっこよくなる前のQちゃんね。)
最近わしもすっかり太ってブラジル体型になってきたので
みんなの目には、この人みたいに映ってるんだろうなあなんて考えたりしてた。
なんか親近感を覚えるルックスだったのだ。ブラジル人には珍しい長髪だし。
船の先頭にそのひとがいた。
わしは意を決して話しかけてみた。
「髪の毛長いですねー。
この船にはForro(ブラジルのダンス音楽)を演奏するバンドマンも
いっぱい乗ってますけど、あなたもミュージシャンですか?」
とかなんとか適当なことを言ってみたら
「最近切っちゃったけど前はもっと長かったんだよ。
音楽はやってないけど好きだから髪の毛伸ばしてるんだわ。」
なんて答えてくれた。
その後もいろんな話をしたんだが
話をしていくうちに彼はモイゼスくんの知り合いだということがわかった。
現在はサンタ・イザベラ・ド・ヒオ・ネグロの病院で
薬剤師として働いているメネン・アルベルトさんは
元々の出身地がサン・ガブリエル・ダ・カショエイラで
モイゼスくんの一家のこともよく知っていたし、
モイゼスくんに紹介してもらった現地の韓国人牧師キムさんのことも知っていた。
なんでも実家はキム牧師の教会の斜め前にあるという。
まったくなんという偶然だ!
話しかけてみるもんだねえ。
もっといろいろお話したかったのに、船は次の港である
サンタ・イザベラ・ド・ヒオ・ネグロに到着してしまった。
人口8500人の小さな町。
現在も日本人の移民が数家族住んでいるという。
「なにかあったら電話してくれよ。相談にのるから。」と言って
電話番号を教えてくれたあと、メネンさんは船を降りた。
やさしいのう。
◆メネンさんと船首でお喋り。後から分かったのだが現地ではとても有名なひとだった。
